2016-06-15

Tokyo Datum (旧日本測地系) から JGD2000 への座標変換

日本測地系が Tokyo Datum (旧日本測地系) から JGD2000 (Japan Geodetic Datum 2000, 日本測地系2000) に切り替えられてから十数年、さらに JGD2011 に改訂されてからも数年が経ち、さすがに最近では Tokyo Datum によって作成された地理データは少なくなりましたが、それでも時折見かけることがあります。

Tokyo Datum のデータを JGD2000 に座標変換するには、測地系を定義するパラメーターを用いた幾何学的な計算による方法と、国土地理院が公開しているグリッドシフトファイル "TKY2JGD.par" で定義されている「地域ごとの変換パラメーター」を用いた内挿補間による方法の二通りがあります。

FME ワークスペースのデータフローの途中で座標変換を行うには Reprojector トランスフォーマーを使うのが一般的かつ簡便ですが、これはグリッドシフトファイルによる変換はサポートしません。しかし、FME は "TKY2JGD.par" を標準でバンドルしており、CsmapReprojector トランスフォーマーを使うことにより、それを用いた Tokyo Datum から JGD2000 への座標変換も行うことができます。

ここでは、これらのトランスフォーマーによって Tokyo Datum から JGD2000 に座標変換を行うワークスペース例を掲げます。サンプルとしたデータは、ウェブ上で公開されているデータのうち Tokyo Datum で作成された数少ない例のひとつ、国土交通省 50万分の1土地分類基本調査「地形分類図」 (Esri Shapefile 形式) です。

FME 2016.1.0.1 buid 16494

FMEワークスペース例


























[ESRISHAPE] リーダー: 地形分類図 (Esri Shape) を読み込む。
Reprojector: 座標変換 (Tokyo Datum -> JGD2000)
CsmapReprojector: 座標変換 (Tokyo Datum -> JGD2000, TKY2JGD.par 使用)
Inspector: 変換結果を FME Data Inspector に出力。

Reprojector パラメーター設定画面

















CsmapReprojector パラメーター設定画面
















Reprojector、CsmapReprojector ともに、Source Coordinate System パラメーターで変換前の座標系名、Destination Coordinate System パラメーターで変換先の座標系名を指定 (選択) します。ここで指定する座標系名は、FME が定義する座標系の識別子で、"Tokyo" は「Tokyo Datum 緯度経度」、"LL-JGD2K" は「JGD2000 緯度経度」を指します。

# FME がサポートする座標系は、Coordinate System Gallery (Workbench メニュー: Tools > Browse Coordinate System) に一覧表示されます。

ソースデータの内容として座標系が正しく定義されていれば (Esri Shapefile 形式の場合は *.prj ファイルによる)、ソース側の座標系名の指定は省略できます。

CsmapReprojector では、これらに加えて、Transformation パラメーターで変換方法を選択することができます。
"TKY2JGD.par" を用いて Tokyo Datum から JGD2000 への座標変換を行う場合は、パラメーター設定フィールド右側の [...] ボタンをクリックして Geographic Transformation Gallery を開き、"Tokyo-Grid_to_JGD2000" を選択します。

Geographic Transformation Gallery






















次の図は、上記ワークスペースの実行結果 (FME Data Inspector への出力) のスクリーンショットです。View 画面上での目視では判別できないほどごくわずかではありますが、Feature Information ウィンドウに表示される頂点の座標値には差があることが確認できます。

Reprojector による変換結果























CsmapReprojector による変換結果 (TKY2JGD.par 使用)























"TKY2JGD.par" で定義されている「地域ごとの変換パラメーター」は、全国の陸部をカバーする範囲について、南北30秒、東西45秒間隔のグリッドポイント、つまり3次メッシュ区画の隅における新旧測地系間の緯度、経度の差分であり、ある地点の座標変換量は、その地点を含む区画四隅のパラメーターの内挿補間 (バイリニア) によって求められます。

この「地域ごとの変換パラメーター」の値は、旧測地系の測量成果における誤差や地殻変動等によって生じた「測地網の歪み」も考慮して求められたものなので、CsmapReprojector (TKY2JGD.par 使用) の方が変換精度が高いとは言えますが、Reprojector による変換結果が「間違い」というわけではありません。実用上、これらのトランスフォーマーによる変換結果の差程度のずれは問題にならないことも多いと思います。

なお、TKY2JGD.par がカバーしていない地点の座標の CsmapReprojector (TKY2JGD.par 使用) による変換結果は、Reprojector による変換結果と同じになります。

2 件のコメント:

  1. CsmapReprojector トランスフォーマーで"Tokyo-Grid_to_JGD2000" を使用したことがありますが、ここのGridというのがどういう意味なのか正直分かっていなかった。この記事の内容を読んでやっと分かりました。ありがとうございました。

    返信削除
  2. 座標変換について考えるときは、元データの精度についても考慮すべきだと思います。
    例えば実距離における10mは、データの精度が縮尺1/50万レベルだと図上では0.02mm、1/2万5千レベルだと0.4mm、1/2500レベルだと4mmに相当します(計算間違ってないですよね?)。
    なので、座標変換の精度をいくら高くしても、元データ自体の精度によっては意味をなさないこともあるのではないでしょうか。

    返信削除